瓦版2024.05.28 第711号 増田寛也さんら8人のコラム掲載。

 風薫る5月が、もう終わろうとしています。咲き誇る色とりどりのバラの香りに満たされる時間は、駆け足で過ぎてゆきます。南から梅雨入りの便りが届き始めました。東京でもすでに真夏日を記録し、気がつけば、近くの線路わきの紫陽花が日に日に色を濃くしています。列島各地の読者のみなさまの周りは、いま、どんな風が吹いていますか。
写真は横浜市の港の見える丘公園のバラ園(つぼい写す)
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緑と絆の木陰』
自然界にさまざまな異変が
      増田寛也(日本郵政社長 スローライフの会共同代表)

カメムシ大発生というニュースを見ていたら、わがマンションの窓の外側にへばりついている姿を発見した。ベランダの植木に被害があっては困ると思い確認したが、今のところは大丈夫のようだ。こちらは観葉植物なので、そもそもカメムシは寄りつかないのかもしれない。これからが本番のナシやモモなど果樹農家にとっては、さぞかし頭の痛いことだろう。
最近は各地で熊の出没も相次ぎ、警察官も負傷している。気候変動、地球温暖化による暖冬、猛暑は農林水産業だけでなく生活全般に甚大な被害をもたらしている。冬の暖かさで越冬するカメムシ、冬眠しない熊など自然界の生態系そのものが大きく変わってしまったことに我々はどう対応したら良いのか。殺虫剤で駆除する、熊よけの鈴で追い払うといった対処療法的なやり方ではもう限界である。
今月政府が「エネルギー基本計画」の改定作業に着手した。この内容が地球温暖化に大きく影響する。技術革新を活かしながら再エネの比率をどこまであげられるか、方向性はこれしかない。国民的関心を高め丁寧な議論を進めていただきたいと願うものである。

<あっちこっちで多事争論>
富士下山のお誘い」
       坂野真帆 (静岡市 株式会社そふと研究室)

富士山の山開きを前に、山梨県が登山日予約や通行料徴収などの入山規制を決め、話題となっています。2カ月ほどの開山期間に、多い年には20万人を超す登山者がひしめき合う状況、弾丸登山や無謀な装備での登山者の話を聞けば、規制することに私も賛成です。
一方、富士山を楽しむ方法は富士登山だけではない、と知らせることもオーバーツーリズム問題の緩和につながるのでは、とも思っています。五合目より下を歩く「富士下山」という手もあるのです。
富士山の俯瞰図を見れば一目瞭然、登山で歩く登山道五合目より上と比べて、その下、山腹のなんと広いこと。弊社では『頂上を目指さない富士山さんぽ』の著者、鈴木渉ガイドといっしょに、富士山腹歩きのツアーを行っています。
意外かもしれませんが、富士山でも春の新緑や秋の紅葉を楽しむ山歩きができるのです。さらに、噴火を繰り返してきた成り立ちから、溶岩が流れたところと免れたところの植生の対比、風穴や溶岩樹型など溶岩流の痕跡、神社や山小屋跡といった信仰登山の名残りなど、この山ならではの見どころが豊富にあります。
ツアーで歩く山腹では、ほとんど人に出会わないというもったいなさ。富士山の未活用部分をアピールして、その魅力を享受しながら保全に努めていければ、と考えています。
ぜひ、ご一緒に!       そふと研究室 https://soft-labo.net

丹波篠山便り(上)「農都のめぐみ米」
       竹見聖司 (兵庫県丹波篠山市 たけみ農園)

丹波篠山といえば、黒豆と黒枝豆。たけみ農園でも田んぼの畝立てや種まきの準備に忙しいですが、今回は「農都のめぐみ米」の話をします。
丹波篠山市は農業の都として「農都宣言」をし、循環型農業や生物多様性とふるさとの川づくり、オーガニックビレッジなどを進めています。多くの農家が関わるお米についても、6月に行っていた中干しはオタマジャクシの成長に悪影響を及ぼすことから、7月に行ったり、化学肥料や農薬の使用量を減らしたり、草刈りも生き物に配慮したりする栽培方法を進めています。
こうして収穫されたお米を「農都のめぐみ米」と銘打って販売。米穀卸最大手の株式会社神明ホールディングスと包括連携協定を結び、タッグを組んでブランド化を目指すことになりました。これまでは、学校給食で使うなどに限られていましたが、これで販路の拡大に大きな期待が持てます。
もちろん、たけみ農園でも「農都のめぐみ米」を栽培しています。

名声と責任
       高橋征吾 (東京都  スローライフの会会員)

4月16日のさんか・さろん「フクシマを見つめて」に影響されてか、本間龍著『原発プロパガンダ』(岩波新書)を手に取りました。本書には、「3.11」に至るまでの半世紀、原発を許容させてきた土壌が大量の一方的な広告・宣伝、歪められた報道によって、どのように形成されてきたのかが述べられています。
一見、良識的に見える文化人・タレントなどの”著名人”が多額のお金を受け取り、広告代理店などのシナリオに沿って、したり顔で人心を麻痺させてきた歴史に暗澹たる思いがしました。事故の責任はもちろん第一に政府、電力会社にあるにせよ、これら”著名人”の責任も極めて重いと言わざるを得ません。
本書の後半は「3.11」以後、再び復活しつつある原発プロパガンダにも触れているのですが、一方には「プロパガンダ」に手を貸さなかった(貸さない)人たちもたくさんいるわけで、その良心に一筋の救いを覚えます。受け手である私自身も、これから広告や報道、SNSといった情報とどう付き合っていくか試されているのかな、と思いました。

「さんか・さろん」の感想
       遠藤夏緒 (長野市 農楽里ファーム)

先日の「さんか・さろん」小笠原洋子さんのお話、とても感銘を受けました。床に物を置かない清々しさ、潔さ。貧しさを楽しむところに自分を置きたい。シンプルで自由で、本当に美しい生き方、暮らし方ですね!!
「いつかまた使うかもしれない、もったいないな」と思うと逆に物がたまってしまい、気が付けばつい床も物だらけになってしまうのですが、初めから物がなければ、物が増えることはないのだ!と、目からうろこです。
時間はかかりそうですが、自分が本当に心地よく感じられる空間に暮らしを整えていきたいと思います。

最近思うこと(下)  「繋ぐ」
       宇都野 淳 (栃木県那須塩原市 スローライフの会会員)

一度も経験したことのない福祉の世界に飛び込んだ。「今日食べる物がない」「金を貸してくれないか」「家族を守れない」など、行き場を求めて窓口に人が来る。私は「何とかしてあげたら」と思うが担当は違う。人は本音で生きていると思いたいが、色々話を聞くと判断に迷う。この仕事が向いてないと思う一方で、何かしてあげたいと思う。お金を貸すことや、食事を与えることも大切だが、これからからどう生きてほしいか、生きるには何が必要かを伝えたい。窓口に来る切羽詰まった相談に耳を傾け、共に悩むのも勉強だと思う。答えは沢山あるはずだ。その人に心を繋いでいくことかもしれない。
豊かさとは人それぞれ異なるが、配った缶詰を囲んで、明日も頑張ろうとする家族もいる。そんな家族にも心の豊かさは届いていると思う。心だけは貧困であってはいけない。「繋がった」と思うだけで、反対に元気をもらえる。

 

『スローライフ曼荼羅』
レインボープライド
       野口智子(ゆとり研究所)

ひと月前のこと、代々木公園を散歩すると、楽しそうなデモにあいました。虹色の団扇などを持って、お祭り風の和やかな行進。その先では大規模なフェスが開催中。LGBTQ理解促進の催しのようですが、家族連れ、男女のカップル、高齢者夫婦やペットまで、参加者は多様です。おしゃれな飲食露店はもちろん、企業スポンサーブースも沢山。この盛り上がりを見て、世論の「舵」は完全にこちらに切られたと実感しました。
https://noguchi-tomoko.com/post-10366/

 

 

『つべ小部屋』
どうする企業・団体献金
        つぼいゆづる (スローライフ瓦版編集長)

30年前のリベンジを果たせるのか、という思いで国会審議を見ている。企業・団体献金を廃止するか否かの話である。
1994年に成立した政党助成法案を国会で取材していた。血税で政党が政治活動をできるようにする制度で、「国民一人あたりの負担はコーヒー一杯の250円」と言われた。その際にも企業・団体献金を温存すれば、国会議員は「税と献金の二重取りだ」と批判されていた。なのに、政党への献金はまんまと維持されてしまった。
「献金に効果があれば賄賂だし、効果がなければ株主利益を損なう」。企業・団体献金の本質はこれに尽きる。
この国会でも、「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」に、自民党へ巨額の献金を続ける三菱重工業の会長が入っていることが指摘された。同社は2022年に3300万円を献金した一方で、23年度の自衛隊の防衛装備品などの契約額は1兆円を超えた。そして有識者会議で、防衛費を1.5倍の43兆円に増やす政府方針へのさらなる増額を後押しする。防衛政策で稼ぐ利害関係者が防衛費増額の旗を振り、自民党が政治献金を受け取る。まさに「キックバック」にしか見えない。
こう考える私は、4月下旬の朝日新聞の世論調査に愕然とした。派閥の裏金問題に厳しい意見が続く一方で、「あなたは、企業や団体の政治献金を、全て禁止するべきだと思いますか。その必要はないと思いますか」との質問への回答を見てのことだ。
「全て禁止すべきだ」39%、「その必要はない」50%、「その他・答えない」11%。
ぬるい世論が、企業・団体献金をまた残してしまう展開を危惧している。

<お知らせ>
半島端の消防団詰所を、日常から親しまれる地域の拠点へするプランを募集します。防災拠点、モビリティ拠点など、困りごとがあったら行ってみる場所に。若者による応募提案を囲んで、地域のみなさんと考えていこうというアイディアコンペの情報です。応募締め切りは6月30日。詳しくは下記から。
主催:NPO ゴンジロウ学生OB有志(千葉県館山市)

https://sakimobi2024competition.studio.site/

<編集室便り>
▽5月の「さんか・さろん」でケチになりました。

小笠原洋子さん「エレガンスに『ケチ上手』」のお話をうかがい、「ケチ」とはむしろ誉め言葉、地球にも優しいライフスタイルと納得。近々YouTubeでご覧いただけます。

▽新年度の会費をお願いします。まだ会員でない方は、ぜひご入会を。
2025年3月までの会費お納めいただきたく、「あ、まだだった」という方、よろしくお願いします。「今年から入会しよう」という方も、今がチャンスです。会員になると、この「スローライフ瓦版」に投稿できるほか、毎月の学習会「さんか・さろん」や催しへ割引参加できます。

●年会費:一口 5000円(何口でも)
●「さんか・さろん」参加費:年間 3000円(年間支払いでない場合、会員は一回1000円、非会員は2000円です)
●振込先
ゆうちょ銀行 振替口座 00190-4-595293 スローライフの会
※他金融機関からのお振込みの場合は
店名:〇一九(ゼロイチキュウ)店、預金種目:当座 口座番号:0595293、スローライフの会 まで。
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【たまな商店】珈琲は大好きだけどカフェインは摂りたくないという人へ!有機玄米を炭窯の余熱でゆっくり焙煎して仕上げた、苦味を感じない珈琲のように楽しめる玄米粉茶できました!

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「NPOスローライフ・ジャパン、スローライフ学会」は
昨年12月、名前が「スローライフの会」に、住所も変わりました。
よろしくお願いいたします。
〒160-0022 東京都新宿区新宿2丁目12番13号
新宿アントレサロンビル2階「スローライフの会」
メールslowlifej@nifty.com  電話090-7433-1741(野口)
※ご連絡はなるべくメールでお願いします。
※活動詳細はホームページからご覧ください。
http://www.slowlife-japan.jp/

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