瓦版2024.06.25 第713号 川島英樹さんら10人のコラム掲載。

 日が長いです。きょう6月25日、東京の日の出は4時26分で、日の入りは19時ちょうど。あくせく働かず、ぼーっとしている時間が増えたせいで、よけいに「昼」が長く感じるのかもしれませんが、いつまでも明るいので、なんだか得をした気持ちになります。これから炎帝がお出ましになるのを前に、いまの時期、ゆっくり夕涼みを楽しんでいます。================================================

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『緑と絆の木陰』

今日は25日

  川島英樹 (せたがや文化財団)

 多くの会社は給料日。勇んで給与明細をチェックした人も多いかもしれない。確かに「定額減税」の文字は書いてある。けれど、手間暇かけてややこしい制度にしたせいで、4万円を実感できた人は少ないのではないか。それより、給与明細を改めて眺めてみて、ずいぶんいろいろ引かれているなぁ…と感じた人が多かったに違いない。
 そんな我々の血税がどこへいくかと思えば、使い道を内緒にしたい政策活動費とか、健康保険証をマイナカードに変える費用とか、選挙ポスター掲示板につけるクリアファイルとか…。日々フツーに生活している人間が、まともにつき合っていられるような話じゃない。若い人たちに、選挙に行くよう説得するのが、ますます困難になりつつある。
 都知事選挙の最中である。テレビやネットが伝えるほど、都民の間で盛り上がっているとは思えないが、それでも関心を持ちやすい選挙だ。誰がいいか、自分で投票できる。首相の名前は書けないけど、知事の名前は書ける。これは大きい。よくも悪しくもイメージの持つ力は大きいから、自分が住んでいる町のロゴマークを選べるような感覚はあると思う。オジサン・デザインばかりでなく、有力候補2人が女性というのも一層結構なところ。
 ぼくが住んでいる中野区や職場のある世田谷区は、ほとんどの部分が「センター・コア・エリア」なる地域から外れていて、ふだん現職知事ご自慢の成果を目にすることができない。選挙期間中、ぜひ一度都庁を訪れて、判断したいと思っている。根っからのゴジラ・ファンとしては、2年間で16億円という、気合いの入ったプロジェクション・マッピングが楽しみでならない。

<あっちこっちで多事争論>

Bonne journée!

  岩崎久美子  (千葉市 放送大学教授)

 毎年、高知の農家の方から葉書で文旦のお知らせが来る。ファックスで「今年もよろしく」と送ると、早春に無農薬を体現したような不揃いの文旦が匂いを放って段ボールで届く。その香りを嗅ぎ、いびつでゴツゴツした文旦を手にすると、とても元気になる。
 高知に地縁があるわけではない。高知に赴任していた知人が、家族のことで打ちひしがれていたわたしに文旦を送ってくれたのがきっかけだった。それから10年以上。直接お会いすることなくおつきあいは続いている。高知の日曜市に出店しているとのことなので、元気なうちにお目にかかってご挨拶をしたい気持ちになる。
 30年以上も前、パリに2年弱滞在した。空き地に定期的にたつマルシェ(朝市)に並べられた新鮮な野菜を見て歩いては、楽しく元気になったものだ。農作物には色があり、さまざまな形があり、自然の造形に芸術が潜んでいると思った。若かったわたしはフランス社会にはなかなか馴染めなかったが、カタコトの簡単なフランス語で野菜や果物を買い求め、 Bonne journée!(よい1日を)と言葉を添えて手渡されると、心が通じ合うような気持ちになったものである。
 生産者から直接買う農作物には生きるエネルギー(氣)が宿っている。

「時の記念日」に「眞暦」ライフをめざす (下)
  山下茂  (東京都 スローライフの会会員)

 宣長先生の『眞暦考』によれば、昔々の人々は自然の移り行きを注視し、各「時」の趣きを感じとりました。行事などの日程も、近いうちなら「幾日さき」と、遠い先のことなら「その季(トキ)のそのほどと、大らかに」設定。生活を取り巻くいろいろな環境要素の状況によって「時」を判別し、高い山の残雪の姿が「農鳥」(ノウトリ)や「代馬」(シロウマ)に見立てられたり、山桜などがそれぞれに開花し、木々の黄葉(モミジ)がそれぞれに散り始める「時」などを暮らしのペースをつくる基礎としたというわけです。
 そんな「大らか」な暦法は、国際社会や日本全国など大きな世間とはシェアしにくいですが、特定の宗教とは関連しないし、自分の暮らす地域の気候風土には見事に適合しますから、スローライフ実践者向けの個別の生活指針にふさわしい。
 とくに高齢期には、家族や世間から認知症と誤解されないように気を付けながらですが、「人生の質」(QoL)を自然体で充実させるような「時」の把え方として、宣長流「眞暦」ライフを本会メンバー各位に心から推奨させて頂く次第です。

飛鳥時代の倉庫を多摩丘陵に復元
  太田民夫 (神奈川県川崎市 スローライフの会会員)

 多摩川に さらす手作り さらさらに なにぞこの子の ここだかなしき
(作者不詳 万葉集 巻十四 3373)
*現代語訳  「多摩川にさらす手作りの布のようにさらにさらにどうしてこの子がこ
れほどいとしいのだろう」
 万葉集で詠われた多摩川から西に約2.6Km。標高約40mの多摩丘陵上に橘樹官衙(たちばなかんが=役所)遺跡群がある(川崎市)。この一角に今春、全国初の「飛鳥時代の倉庫」が復元された。川崎市教育委員会によると、この遺跡群は「7世紀後半から10世紀にかけての古代地方官衙の成立から廃絶までの推移を知る上で、全国的にも貴重な遺跡」で、同市初の国史跡に指定されている(写真)。
 倉庫は6m四方の地面に、直径30cmの柱16本で建つ高床式。高さは9m。当時の税制度である「租庸調」の租として納められた稲を保管していたと見られる。
6月中旬、倉庫の内部公開に、自宅から約50分かけて歩いて出向いた。中へ入ると、柱もなく、がらんとした空間。説明係は「災害など緊急時の食料備蓄だと思われる」「(泥棒対策に)この地区の周りに溝を巡らせていた」など質問に答えてくれた。
 同市の資料によると、倉庫に入れた稲は全部で1500斛(こく)分という。1500人分の稲になるらしい。倉庫の建設費は約1億円。板校倉(いたあぜくら)づくりの職人の確保に苦労した、という。
 万葉集には橘樹郡から筑紫へ防人として行く人の歌があるが、この遺跡群の近くに住んでいたのか、農民か、どうやって九州に行ったのか、この官衙で防人としての手続きをどう行っていたのか。さまざまな想像をかきたてられた復元倉庫の見学だった。

9年目の綿、畑に定植
  戸塚久美子 (静岡県掛川市 NPO法人「冀北の杜」理事長)

 綿を栽培しています。10粒100円の種を、今では700苗を植えるまでになりました。
 障がい者のメンバーらの工賃にはまだまだ厳しいのですが、綿を通して、たくさんの優しく前向きな皆さんとつながって来ました。
 糸にしてコットンコースターを手織りしていたら、「コットンコースター」の歌も作っていただきました。セルロースナノファイバー研究の皆さんと開発中のプロジェクトに参加させていただいたりもしています。素敵な綿の活動です。
 この畑(下の写真)のどこが綿の苗か、分かりますか? 焦げ茶色の草堆肥にくるまれて、小さな緑があるのが見えますか。それが綿です。
 草も工賃をいただく除草活動で集めたもので、循環型農業にもなっています。植えるまでの工程では、優しい地域ボランティアの皆さんに支えられています。

ミクロからマクロの改革へ (下)
  大山皓史 (千葉県松戸市 弁護士)

 マネー獲得の取引機会を世界中に拡充する自由を追求する新自由主義思想に基づいて、多くの国の制度が改変されました。私たち市民も政治的無関心などで事実上それを容認してきた結果、世界各国の社会は、弱肉強食の自由競争により経済的な格差が二極化し、生活環境の劣化が進んだだけでなく、気がついてみると地球環境を破壊し、深刻な気候変動をもたらす等、いまや大変な時代です。
 こうした不穏な世界の現状はマネー至上主義者の過剰な欲望が、社会の歪みを大きくしたのが主因です。そうであれば私たち市民が、私たちの社会を皆が幸せに生きることができる共同体に、作り変える以外にありません。人類学者のティム・インゴルドは、人間とは、有機体(生命を持っている個体=生物)であると同時に社会的な存在であるといいます。ならば主権者であり生物社会的存在である私たちが、自己利益しか考えないマネー至上主義者から、先ず国の実権を取り戻すことが必要でしょう。

認知症の母のこと
  舟越隆裕  (栃木県日光市  珈琲CoCom)

 認知症が進んだ母は、約2年前から施設に入所しています。
 13年前に父が旅立ってから、愚痴も言わず一人暮らしをしてきた母。振り返って思えば、すごいことだなと。そんなことも気づかず、買い物に連れて行くくらいしかできなかったことを申し訳なく思っています。
 でも、私が元気に楽しく生きることが母への恩返し。そう思って、通訳ガイドになろうとチャレンジしたりして、迫りくる老いに負けないように日々を過ごしています。
 先日、面会に行った時は調子が良かったらしく、たくさん話してくれました。でも残念なことに、こちらが聞き取れるのは半分程度。
 が、帰り際、その日一番のはっきりした口調と大きな声で、「がんばって!」と声をかけてくれました。話の流れからは出そうもない言葉なのですが、母の秘めた思いの現れでしょうか?
 涙が出そうになりながら、施設を後にしました。
 母は来月、95歳の誕生日を迎えます。(写真は母がつくった折り紙の小箱です)

「ケチ上手」をめざす
  小牟田弘子  (長崎県雲仙市 スローライフの会会員)

 5月のさんか・さろん、小笠原洋子さんの「エレガンスにケチ上手」に参加しました。「節約」と聞くと、「我慢しなければならない」という負のイメージがありましたが、小笠原さんの生活は、むしろ毎日を楽しく、心を豊かにするようなもので、想像していたものと全く異なるものでした。
 写真で拝見したお部屋は、無駄なものがなく清潔感があり、使わなくなった家具などをお洒落に再活用されているなど、とても工夫とセンスが詰まっていて、真似してみたいと思いました。また、「無駄な物を買わない」「食べ物は残さず食べる」「物を大切に長く使う」ことは、節約だけでなく、環境にもやさしいことを学びました。
 さろん後、小笠原さんの著書『財布は軽く、暮らしはシンプル。74歳、心はいつもエレガンス』を購入し、さらに小笠原さんの節約術を学ぼうと読んでおります。自分でも出来ることを少しずつ生活に取り入れてみたいと思います。貴重なお話をありがとうございました。

『スローライフ曼荼羅』

30分歩くと

  野口智子  (ゆとり研究所)

 群馬県富岡市で5地区の地域づくり「円卓会議」を手伝っています。地域活動センター(もと公民館)の建て替えを考える地区で、先日、会議前に周囲を歩きました。すると机上で考えるのと違うことが見えてきます。子育て世代が多い、湧き水がありホタルも飛ぶ、畑も多い、など。そうなると、単に何階建てにするか、なんてことよりも幅広なアイデアが出ます。周辺歩きを提案されたセンター長に感謝です。https://noguchi-tomoko.com/post-10400/

 

『つべ小部屋』

おふざけでないよ

  つぼいゆづる (スローライフ瓦版編集長)

 政治資金ザル法の顛末に怒髪天を衝いている。どうせ自民党政権だから、ろくな結果は生まれないと思ってはいたが、世論の風圧によって少しは納得できる展開になるかもしれない、という程度の期待はした。
 だから、小欄は2月9日号で「収支報告書のデジタル化が必須」「国会議員の財布を各自一つに限定した上で、その報告書のWEB公開を義務づける」べきだと書き、5月28日号では「献金に効果があれば賄賂だし、効果がなければ株主利益を損なう。企業・団体献金の本質はこれに尽きる」と企業団体献金の禁止を訴えた。
 どちらも、ものの見事に素通りされた。デジタル化は「オンライン提出が義務化」されたが、とんだマヤカシだ。国会議員は複数の関係団体で資金を使い回しているので、資金の出し入れをする団体を一つに固定した上で、第三者が検索できるようにする必要があった。それをせずに、官報への要旨掲載を廃止するのだから、法改悪でしかない。
 党首討論で首相は「政治に金がかかるのは常識だ」と開き直った。裏金問題の真相究明を怠り、何の責任も取らずに、よくもまあ言えたものだ。金がかかるから30年前から政党助成金という税金を投入しているではないか。ことし自民党は160億5300万円も受け取るのだ。百歩譲って、現状のように金を使いまくる政治を続けたいのなら、金の出入りを堂々と公開しなさいよ、である。
 多くの有権者は思っている。おふざけでないよ、と。沸々と憤りをため込みながら、改めて思い起こしている。あの旧統一教会は、日本学術会議は、原発回帰は、どうなっているんだっけ。

<編集室便り>

▽11月9日(土)・10日(日)フォーラムです。

 以前からお知らせしていましたように、この秋、11月には高知県梼原町でフォーラムです。取り急ぎ、早めに航空券などを確保なさってください。

・名称:「スローライフ・フォーラムinゆすはら」
・場所:高知県梼原町「ゆすはら座」で
・テーマ:「集落と、若者と」
・11月9日(土):町内「集落活動センター」2カ所、隈研吾設計・図書館、「茶堂」などを見学。夜は「夜なべ談義」で交流。
・11月10日(日):午前中「分科会」川竹大輔、坪井ゆづる。午後「シンポジウム」高知県知事、梼原町長、増田寛也、中村桂子、神野直彦。
・交通:東京から空路の方は、下記の切符をご自身で手配ください。
【行き】11月9日 9時20分 羽田発(JAL493)➡10時40分 高知龍馬空港着
【帰り】11月10日 19時15分 高知龍馬空港発(JAL498)➡ 20時35分 羽田着
※空港と梼原町の往復は、事務局が大型バスをチャーターします。
※陸路の方は、9日 11時30分、JR高知駅に上記のバスをつけます。
※宿泊は、事務局が確保した梼原町の民宿など、安価な宿泊施設となります。

▽サッカー「サガン鳥栖」ファンになった「さろん」でした。

 6月18日「さんか・さろん」139回「スローな視点でJ1を語る」がありました。講師は佐賀市の坂田啓子さん。長年のサッカー「サガン鳥栖」サポーター。軽快な語りと、心温まるエピソード、わかりやすいお話で、皆さんサッカーファンになってしまう夜でした。詳しくはこちらから。

サッカーにスローライフをみた、「さろん」でした。

▽会費お待ちします。
 今年度会費がまだの方、お待ちしております。この際、新規会員ご希望の方は、まずメールを。 slowlifej@nifty.com
・年会費:一口 5000円(何口でも)
・「さんか・さろん」参加費:年間 3000円(年間支払いでない場合、会員は一回1000円、非会員は2000円です)
※「さろん」年間カリキュラムはこちらから https://www.slowlife-japan.jp/2024/03/28/%ef%bd%93-297/
会員は「スローライフ瓦版」に投稿できるほか、「さろん」「フォーラム」などの催しに安く参加できます。
この会は皆様の会費とボランティア作業で運営しております。今後の活動に向けてぜひご協力ください。
・振込先
ゆうちょ銀行 振替口座 00190-4-595293 スローライフの会
※他金融機関からのお振込みの場合は
店名:〇一九(ゼロイチキュウ)店、預金種目:当座  口座番号:0595293、スローライフの会 まで。

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「NPOスローライフ・ジャパン、スローライフ学会」は昨年12月、名前が「スローライフの会」に、住所も変わりました。よろしくお願いいたします。

〒160-0022 東京都新宿区新宿2丁目12番13号
新宿アントレサロンビル2階「スローライフの会」
メール slowlifej@nifty.com 電話090-7433-1741(野口)

※ご連絡はなるべくメールでお願いします。
※活動詳細はホームページからご覧ください。
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