瓦版2024.5.14第710号 室﨑千重さんら10人のコラム掲載

スローライフ瓦版 710号(2024.05.14)

 じゃーん、できました。ついに、やりました。今回から写真つきの瓦版を、お届けします。デジタル難民の事務局(じじ・ばば)が苦心惨憺、七転八倒、艱難辛苦を乗り越え、脂汗たらたらで作成しました。受信環境によって、画像のダウンロードを求められる「ひと手間」を要する場合もあるかと思います。そのときは、ワンクリック、よろしくです。

ちなみに、この写真は岩手県陸前高田市の高田松原津波復興祈念公園(つぼい写す)。

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ご感想を下記にお寄せください。
slowlifej@nifty.com

 

『緑と絆の木陰』

忘れない、という支援
  室﨑千重(奈良女子大学准教授)

 

 元旦に発生した能登半島地震からの復興は、なかなか進んでいません。能登に最近行った方たちからも、発災直後のような倒壊建物が残ったままの場所が多くあると聞きます。そんな状況なのに、日々のなかでどれほど能登半島の今を知る機会があるでしょうか。ニュースで大きく取り上げられる機会が減るにつれ、自分の毎日の生活に埋もれてしまい能登のことを忘れてしまう時間も増えているように思います。このことが、遅々として進まない復旧・復興の現実を生きる能登に暮らす人、避難生活をしている人たちを、世の中から忘れられたような、取り残されたような、切なく、寂しい気持ちにさせているのではないか、と思うのです。
 阪神淡路大震災のあった1995年、私は神戸で暮らしていました。土埃の舞う復旧復興の日々を過ごす中、同年3月に地下鉄サリン事件が起こると世の中の関心は完全にそちらに向いてしまい、何一つ復興していないのに取り残されたような悲しい気持ちになったこと、もう一つ、地震から3,4年経過以降からは「復興したね」と言う外の人の言葉に、まだまだ復興は終わっていないのに、と感じた思いは今も残ります。
 今回の能登地震の復興では、人口減少の進む地方でのこれらの創造的未来をどう描き、創っていくかが何より大事で、そして難題です。この未来像は、今後の日本がどうあろうとするかと直結するもので、能登以外の私たちも共に考えるべき課題であるはずです。能登半島の被災地が日本から取り残されたと感じないですむ息の長い支援を、みんなのできることを少しずつ持ち寄り続けたいと思います。
 私にとっての最初の一歩は、やはり忘れないこと。このコラムを書きながら、日々の自分を反省しました。

 

<あっちこっちで多事争論>(会員投稿)

ガシラの唐揚げが大ヒット! (かざまち定食の話 下)

  西川展子(和歌山県海南市 「げんき大崎」理事)

 

 海の駅「かざまち」の鮮魚販売やランチで大活躍の磯魚ですが、ちょっと悩みもありました。「建て網」といわれる漁法で獲れる磯魚の中でも、特に「ガシラ(カサゴ)」は毎週、たくさん入荷するのですが、小骨が多く、加工に不向きなのです。そのうえ、地元では当たり前すぎてあまり人気がなく、特に小さい魚は売れ残りがちでした。
 これを食材として活かす方法をなかなか思いつけずにいましたが、ある時、ランチでガシラの唐揚げを食べたお客様が、「パリパリの揚げ方が美味しい」と、とても喜んでくれました。これを機に、ガシラの「唐揚げ」をお総菜として販売することにして、この春、かざまちのお総菜コーナーで販売してみました。
 ヒレや小骨まで食べられるよう、しっかり二度揚げするには、時間と手間がかかります。でも、カラリと揚がったガシラは、すぐ食べられて、酒のアテにも美味しいと、地元のお客さんにも大好評! 家庭で揚げ物が敬遠されがちな事情もあってか、「ヒットおかず」として、定番化しそうな勢いです。※写真は生のガシラと唐揚げのガシラ。西川さん提供。

 

 

6月1日に、どうぞ十津川村へ
  小山手修造 (奈良県十津川村 村長)

 

 新型コロナの5類移行後、十津川村の観光地では徐々に賑わいを取り戻しています。今年のゴールデンウィークは多くの観光客が訪れ、観光関係者からは「賑わいが戻ってきた」と明るい声が聞かれました。しかし、コロナ禍で一度激減してしまった「賑わい」の再開には、更に行政の強力な後押しが必要であると考えています。
 折しも、本年は熊野古道の『世界遺産登録』と十津川温泉郷の『源泉かけ流し宣言』から20周年を迎えます。これを記念して数々のイベントを展開し、住民主体の賑わいと憩いの場を創出する持続可能な地域づくりの契機とします。
 まずは、6月1日に「谷瀬の吊り橋」周辺で花火を打ち上げます。多くの屋台も出店する会場では、カラオケ大会、陸上自衛隊第3音楽隊による演奏会、最後には5,000発の花火。村民の皆様が、故郷へ戻ってきた友人・親類と集う機会となればと期待しています。
 十津川村の人々の暮らしと豊かな自然の風景は、きっと多くの人々にとっても懐かしい気持ちになる「心のふるさと」たる地域です。スローライフ会員の皆様も、以下のスケジュールを参照していただき、ぜひ「心のふるさと」十津川村へ足を運んでいただきたいと切望しております。

https://totsukawamura-w20th.com

 

遠野馬の里
  増田満喜 (東京都  スローライフの会会員)

 

 2006年10月の「スローライフin遠野」で、初めて筑紫哲也さん、川島さん、野口さんにお目にかかったのを思い出す。夫の仕事に伴い移り住んだ岩手での12年間、実に多くの体験や経験をした。多少、苦手なことも今となっては、やって良かったと思う。
 その経験の一つ、遠野で思い出すのは、乗馬の練習に住まいのある盛岡から夫と通ったこと。サラブレッドで役目を終えた馬が乗用馬として訓練されているので体型はまさにサラブレッド、格好が良いし背も高く大きい。
馬は賢く、人を乗せた瞬間にその人の技量がわかるのだと思う。私が騎乗する馬に指導の先生が跨ると、パッと馬の表情が変わる。言葉で言い表すのは難しいが、不思議と何倍もカッコが良くなるのだ。
 私が夫と結婚した40年前、披露宴の祝辞で、私側の主賓は「結婚は最初が肝心、手綱を緩めずしっかり握りなさい」と。当時は、ただ漠然と聞いていたが、乗馬を始めて気付いたのである。馬には手綱の操作で右、左、止まれなど指示をだす。馬が草を食べようと首を下げはじめた時には、食べさせないように手綱をグッと引く。一度食べさせてしまうと、この人は食べさせてくれる人と思い、何度も同じ行動をしてしまう。その手綱加減が実に微妙。人間関係も結婚生活も同じ事なのかと。私達の長い結婚生活、どちらが御してどちらが御されているのかと思う。

※写真は遠野寺沢高原での乗馬。増田さん提供。

 

 

「地震予知の絶望と希望」
  佐藤義孝 (東京都 スローライフの会会員)

 

 ナマズは兎も角、わが国で科学的な地震の予知・予測の研究がスタートしたのは1880年の日本地震学会の設立に始まるとされています。
 爾来、「地震の予知」が官学あげてのテーマとなり、多くの予算が投下されましたが、阪神・淡路、東日本の二度の大震災を経て、何故か「地震の予知」は当面不可能とされたのでした。
 その一方で、地球物理学ではなく、GPSなどの衛星による地上の電子基準点観測により、地震の「前兆情報」の把握可能性が出て来ました。
しかも、2004年の本システム稼働後の過去20年間の大地震の全てで、この前兆情報が確認された一方、前兆情報なしに発生した大地震は一つもありませんでした!
 政府は「首都直下地震」、「南海トラフ地震」の今後30年以内の発生確率を70~80%として警鐘を鳴らしています。私たちはどのように行動したら良いのでしょうか。
 「地震予知の絶望と希望」(幻冬舎)という本を出版させて頂きました。事務系の書いたアナログ本です。詳細は本書で!

 

「霧の淵」が上映中

  吉田志帆 (奈良県川上村 スローライフの会会員)

 

 この映画は奈良県川上村が舞台で、「NARAtive(ナラティブ)プロジェクト 」の一環。河瀨直美監督が中心となり、奈良県内各所で映画製作を進め、今と未来、奈良と世界を映画でつなぐプロジェクトです。川上村柏木の朝日館、山、川、ダム、村人が映画に登場します。大きなスクリーンに映る川上村をご覧ください。
 村瀬大智監督がメガホンを取り、川上村に長期滞在し書き上げた家族の物語。主役はオーディションで抜擢された奈良県出身の俳優・三宅朱莉さん。老舗旅館を営む家に生まれた娘:イヒカを演じます。その母親役は水川あさみさん、父親役は三浦誠己さん、祖父役には堀田眞三さんが出演し、脇をどっしりと固めています。
 サンセバスチャン国際映画祭、釜山国際映画祭、ブルガリア国際映画祭など国際的に評価されています。公式サイト https://kiri-no-fuchi.com/

 

最近思うこと(上) 「つながり」
  宇津野淳 (栃木県那須塩原市 スローライフの会会員)

 退職後、支援が必要なお年寄りや、一人暮らしの方を地域が支える組織作りに取り組んでいる。どんな形で見守るかを、地域に入ることで得られる情報を頼りに地域が出来ることを共に考える。しかし現実は厳しく、人のことなど構っていられない、プライベートに入ることはできないなど、壁は厚い。昔の地域のつながりで、ゆったりとした生活の中では、周りが良く見える。必要な時に情報を得られ支援もできた。時代は進化しているというが、進化しつつ回帰するのもよい。
 地域の老人会では「限界集落」や「若者がいない」などの話題が多い。私は、若者に頼るのでなく、年配の方が経験と知恵で若者を育てる地域にしようと伝えた。どこかで聞いた増田寛也さんの言葉を借りた。年老いた先輩たちは、笑いながらうなずいてくれた。何かが変れば、と思う。以前廃校となった場所で、お年寄りと若者の交流イベントを野口さんとやった。お年寄りと若者がつながったあの瞬間は今でも忘れない。  つづく

 

飯山へ旅して

  川島正英 (東京都 スローライフの会顧問)

 

 「NPOスローライフ」が閉じ、巣をなくした思いの象さんは、「飯山へ」のお誘いに感激した。
 この旅は、飯山の「蛍の宿を守る会」の提案。田植え、草取り、稲刈り、と年に3回、農作業で汗を流し、温泉と夕食を楽しむ仲間たちの集いである。
 「守る会」は解散したが、楽しいパーティを、ということ。しかも、姪の中谷美南子家の3人共々の旅。ずっと車で付き添ってくれるという。すばらしい。否も応もない。
 飯山へは「守る会」で20年近く出かけてきた。でも、桜のシーズンに訪れたのは、今回が初めてだった。すばらしい桜と菜の花。何よりもの楽しい宴――。
 翌朝も。かつて作業をした田に集う。会の育ての親・小山邦武さんも。記念写真・歓談・喜ぶ…。信濃川の堤防や川原も、見渡す限りの菜の花と桜。満開で迎えてくれたのだ。わがふるさとよ、ありがとう。

 

『スローライフ曼荼羅』

綾部、再び。

  野口智子(ゆとり研究所)

 

 昨年の春、「スローライフ・フォーラム」でお世話になった京都府綾部市です。このたび、私の仕事として通うことになりました。綾部市では、いわゆる「限界集落」を「水源の里」と呼んでいますが、そのいくつかの里の応援に入ります。昨年は、「綺麗」「気持ちいい」「美味しい」と絶賛したものですが、そうであるならばその「里」を維持するために何か恩返しをと思います。何が出来るかわかりませんが、これからが本当のお付き合いになります。
https://noguchi-tomoko.com/post-10347/

 

『つべ小部屋』

地方自治法の改悪

  つぼいゆづる(スローライフ瓦版編集長)

 

 いま、国会で地方自治法の改正、いや改悪の議論が進んでいる。
 私たちの日々の生活に、いきなり大きな変化をもたらす法律ではないので、世論の関心は低い。戦闘機の輸出や経済安全保障関連の民間人の「適性評価」などに比べて目立たないのは仕方ない。だとしても、これらと同じように、この国の「たたずまい」を変えてゆく内容だけに、黙ってはいられない。
 ざっくり言えば、国が自治体に指示する権利を拡充しようとしている。大災害や感染症蔓延で既存の個別法では対処できない事態に対応するためというが、現時点で具体的な事態は想定されていない。どうやら、コロナ禍の際に、国と自治体の足並みにちぐはぐさが目についたのを受け、もっと国の指示に従え、ということらしい。
 要するに、政府が政府の都合と判断で、自治体を指示し、従わせる、という構図をつくっておこうという底意が透けてみえる。この法改悪が、緊急事態に備えると称して憲法改正を声高に叫ぶ動きの露払い役になる可能性も否定できない。
 一連の分権改革で、国と地方の関係は「上下・主従」から「対等・協力」になったと言われて四半世紀になる。なのに、こんな上下関係の再構築を、国が言い出すところが、現在の国と自治体の力関係を物語る。分権改革の旗を振った全国知事会などが身体を張った抵抗をしないのは、「お上頼み」体質の表れか。国の判断で自治体に交付金をばらまく「地方創生」政策に、自治体が手なずけられていることの裏返しか。
 「いざという時、凡庸なうちの自治体より政府の方が信頼できる」と考える人も多いかもしれない。だが、コロナ対応を見るまでもなく、危機に際して現場を知らぬ国の判断が常に正しいなんて、ありえない。

<編集室便り>

▽5月の「さんか・さろん」は「ケチ」のお話です。
講師の小笠原洋子さんは「ケチ」という言葉を前向きにとらえ、「ケチカロジー」という言葉を編み出し、シンプルな暮らしを実践、提案されています。
今回はその暮らしを具体的に解説いただきながら、「ケチ」は素敵でエレガンス、地球にも優しい、という発見をしましょう。

日時:5月21日(火)19時から20時30分、zoomで。
テーマ:「エレガンスに『ケチ上手』」
講師:小笠原洋子(エッセイスト)
申込:5月18日(土)までにメールで。slowlifej@nifty.com
詳しくは:https://www.slowlife-japan.jp/2024/05/02/%ef%bd%93-302/

▽新年度の会費をお願いします。まだ会員でない方は、ぜひご入会を。

2025年3月までの会費お納めいただきたく、よろしくお願いします。
●年会費:一口 5000円(何口でも)
●「さんか・さろん」参加費:年間 3000円(年間支払いでない場合、会員は一回1000円、非会員は2000円です)

●振込先
ゆうちょ銀行 振替口座 00190-4-595293 スローライフの会
※他金融機関からのお振込みの場合は
店名:〇一九(ゼロイチキュウ)店、預金種目:当座  口座番号:0595293、スローライフの会 まで。

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「NPOスローライフ・ジャパン、スローライフ学会」は
昨年12月、名前が「スローライフの会」に、住所も変わりました。
よろしくお願いいたします。

〒160-0022 東京都新宿区新宿2丁目12番13号
新宿アントレサロンビル2階「スローライフの会」
メール slowlifej@nifty.com 電話090-7433-1741(野口)

※ご連絡はなるべくメールでお願いします。
※活動詳細はホームページからご覧ください。
http://www.slowlife-japan.jp/
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